第2話

泣きそう
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2024/06/01 14:26
渡辺side





…誰かが俺のことを呼んでる。


でも、何も見えないから誰なのかも分からない。


だけど、どこか安心する声だ。


うっすらと暗がりの中に光が見えてくる。



赤みがかかったその景色の向こうで、俺の手をつなぎながら倒れてる人がいる。



あの声の人かな…?


手を伸ばそうとしたそのとき、また夢から覚めた……。











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なんか、今日の夢は見た事があるような気もする。


夢でじゃなくて、現実で。




でも、どうしても思い出せない。



あの日の事故で記憶をぜんぶ失った俺には、どうしようもない悩みだった。




あ、そういえば今日はラウールが来る日だったな。



記憶を失った俺は、SnowManっていうアイドルグループで活動してることを聞かされた。


それから、メンバーの自己紹介も。



受け入れるのに時間はかかったけど、今は何とかできてる。



事故のときに心臓がダメになりかけちゃって、たまたま相性の良さそうな心臓を移植してもらったけど、まだ動いちゃいけないらしい。



移植してから少なくとも、2ヶ月は入院だってさ。


退屈でしかたがない。


そう思ってたら、ガラッと扉の開く音がした。



ラウール
しょっぴー!!
今日はね、なんだと思う!?



紙袋を片手に興奮気味に聞いてくる。


ラウールは毎回お土産を持ってきてくれて、それでクイズを出してくる。



渡辺翔太
んー、ゼリーとか?
ラウール
さっすが、しょっぴー。
正解は、シャインマスカットのゼリーでした〜
渡辺翔太
毎回毎回、持ってこなくてもいいんだよ?笑



そう言ったら、少しだけ悲しそうに笑いながら頭を横に振ってた。



あ、忘れるとこだった。


ラウールに聞きたいことがあったんだ。


渡辺翔太
ねぇ、ラウール?
聞きたいことあるんだけど、いい?
ラウール
んー?いいよ〜
渡辺翔太
…俺が事故に巻き込まれたときって、俺ひとりの仕事だったっけ…?



さぁ…っと、ラウールの顔から血の気が引いた気がした。


なんか、聞いちゃいけないことだったか?


でも、普通に仕事のこと聞いただけだよな…。



ラウール
…1人での仕事だったよ。
そのときは、だれも今のメンバーはいなかったよ…
渡辺翔太
…そっか。なんか、変な事聞いちゃってごめんね
ラウール
ううん、なんか思い出しそうになったんでしょ?だったら、いい傾向だよ
渡辺翔太
うん、だよな…



あえて言わないけど、なんてまそんな泣きそうな顔してるの?


俺がした質問でそんなに嫌な思いした?


それとも、その事故にラウールのだれか大切な人が巻き込まれたりしてたの?


聞きたいけど、聞けない。



そんなに泣きそうな顔してるのに、無理になんて聞き出せないよ。




…でもさ、俺にも本当のこと教えてよ…。

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