渡辺side
…誰かが俺のことを呼んでる。
でも、何も見えないから誰なのかも分からない。
だけど、どこか安心する声だ。
うっすらと暗がりの中に光が見えてくる。
赤みがかかったその景色の向こうで、俺の手をつなぎながら倒れてる人がいる。
あの声の人かな…?
手を伸ばそうとしたそのとき、また夢から覚めた……。
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なんか、今日の夢は見た事があるような気もする。
夢でじゃなくて、現実で。
でも、どうしても思い出せない。
あの日の事故で記憶をぜんぶ失った俺には、どうしようもない悩みだった。
あ、そういえば今日はラウールが来る日だったな。
記憶を失った俺は、SnowManっていうアイドルグループで活動してることを聞かされた。
それから、メンバーの自己紹介も。
受け入れるのに時間はかかったけど、今は何とかできてる。
事故のときに心臓がダメになりかけちゃって、たまたま相性の良さそうな心臓を移植してもらったけど、まだ動いちゃいけないらしい。
移植してから少なくとも、2ヶ月は入院だってさ。
退屈でしかたがない。
そう思ってたら、ガラッと扉の開く音がした。
紙袋を片手に興奮気味に聞いてくる。
ラウールは毎回お土産を持ってきてくれて、それでクイズを出してくる。
そう言ったら、少しだけ悲しそうに笑いながら頭を横に振ってた。
あ、忘れるとこだった。
ラウールに聞きたいことがあったんだ。
さぁ…っと、ラウールの顔から血の気が引いた気がした。
なんか、聞いちゃいけないことだったか?
でも、普通に仕事のこと聞いただけだよな…。
あえて言わないけど、なんてまそんな泣きそうな顔してるの?
俺がした質問でそんなに嫌な思いした?
それとも、その事故にラウールのだれか大切な人が巻き込まれたりしてたの?
聞きたいけど、聞けない。
そんなに泣きそうな顔してるのに、無理になんて聞き出せないよ。
…でもさ、俺にも本当のこと教えてよ…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。