ウシビは楽しそうにそう言う。
“僕ら”に...?
ウシビはそう言い残して消えた。
それと同時に、町全体に放送が流れた。
町がざわつき始める。
『ゲームスタート。』
町の人たちはパニックになっていた。
だからだろう。誰も気付かなかった。
鬼が近付いてきていることを。
グシャ
目の前に血が飛び散る。
血が飛び散った先には何人もの人が
赤黒い血を流して倒れていた。
そして、次々と倒れていく。
赤黒い血と悲鳴が混ざり合って
“死”という名の曲を作り上げる。
ふと、あの夢を思い出す。
家族のうめき声。
「何で助けてくれなかったの?」
「何であのとき来なかったの?」
背筋が凍る。
今、この町には家族全員がいる。
このゲームはこの町の人全員強制参加。
つまり...
家に向かって全力で走る。
もし、あの夢が本当だったら...
もし、あの夢の言葉が嘘じゃなかったら...
ガチャ
家のリビングの扉を開ける。
辺り一面の赤黒い血。
家族の無惨な死に顔。
それらが全て、私の目に映り込む。
もう、遅かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!