うっすらとした光を感じて、目を開けた。
どうやらいつの間にか寝ていたみたい。なんだか夢見心地で、意識がふわふわしている。あれ、私は何をしていたんだっけ。
見慣れないきらきらした光景に違和感を感じて、辺りを見渡したところで気づいた。
そうだ、いきなり与えられたこの部屋に慣れようと思って、いろいろ見て回ったりして、ちょっと疲れたからソファに座って、ふわふわだ、これは何円するのかなぁ、なんて考えてた……はず。
寝ようとは全く思ってなかったし、特段眠気があったわけではないのに。
ただ、一度中途半端に眠ってしまうと、眠気がどこからか湧いてくるもので。身体を動かす気力がない。
もういいや、なんならもう一回眠ってしまおうか。
そっと目を閉じると、身体はまだ寝ることを覚えていて、意識がすぐに夢の中へと帰ろうとしていた。
……その時、扉の方からコンコン、と、乾いた音が鳴った。
眠ろうとしていたからか、やけに大きく聞こえたそれに驚いて強制的に意識が現実へ引き戻される。
もう一度扉をノックする音が響き、慌てて起き上がり扉の方へ向かう。
また会いに来るとか言ってたし、ゴーゴリか?
もしくはドストエフスキーか。どっちでも嫌だけど、開けないとあとが怖い。
少し怯えつつも扉を開けると、
そのどちらでもなく、シグマさんが立っていた。
「……すまない急に、休んでいたか?」
「えっ、あ、全然!!えっと、どうかされましたか?」
驚いて立ち止まってしまった私を見て不安そうに言うシグマさん。気遣うような言葉が身に染みる。
思いっきり寝起きの顔で恥ずかしい。せめてさっき起きた時にすぐはっきりと目覚めていたらよかった。
「あなたがもうこっちに来ていると聞いて、気になってな。大丈夫か?」
「大丈夫……ではありますけど、いろいろ慣れないです」
「何でも言ってくれ、できることがあったらする」
優しく微笑みながら言う姿が眩しくて、もう眠気なんてちっとも残っていない。
あの掴みどころのない二人とは全然違う、純真無垢な優しさが嬉しくてつい口元が緩む。
シグマさんだけならいくらでも躊躇わず協力するのに。
「あと、ドストエフスキーが呼んでいた。仕事があるとか言っていたな……。どちらかと言うとそっちが本題だな」
どことなく申し訳なさそうな顔をして言うシグマさん。
折角いい気分だったのに、台無しになった。
断じてシグマさんのせいではないけど。
呼び出し。仕事。普通に、怖い。
そりゃあ、私をただ飼うために連れてきたんじゃないんだから、呼び出すだろうし仕事もさせてくるだろうけど。
でも今は特にすることないって言っていたから、油断していた。
正直何もしたくないというのが本音だし、帰れるなら今すぐ帰りたい。ずっとそう思っている。
でも、行くしかない、のか。
行かなかったら怖いし、シグマさんにも迷惑がかかりそうだし。
「ちなみに今すぐ行かないとダメですか、それ」
「すぐの方がいいだろうな」
せめてもうちょっとだけこの暖かい空気に居たかったのだけど、その希望がズバッと絶たれた。
ああもう本当に、行きたくない!












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。