今日は、始業式。
そして、待ちに待った新学期。
少し前まで着なれない大きい制服だったはずが、
今ではピッタリ自分に
合っているように感じられる。
それは私自身、成長した証拠だ。
この子は紗綾ちゃん。
高校1年生の時からずっと一緒のクラスで
仲良くなった子。
私たちも、もう高校3年生。
ちょっと前に
入学式したばっかだったはずが
もう少しで卒業だなんて。
なんだか実感わかない。
さて。
3年生では
どんなクラスメイトに出会えるだろうか。
紗綾の言っていることが
いまいちよくわからなくて
首を傾げると
紗綾がとてつもなくキラキラと輝く笑顔を
こちらに向けた。
ニカッとはにかむ彼女を見て
半分呆れ顔の私。
毎年毎年そんなことをお願いしている彼女は
健気なのか、おバカなのか、なんなのか。
ていうか芸能人がいたとしても
売れてる人なら忙しくて学校なんて
来れないんじゃない??
好きな人が芸能人。
なんて言う人の気が知れない。
どうして憧れではなく、
好きの方面で見てしまうんだろうか。
ふと、頭に浮かんだある人物。
背が高くて。
くりくりの大きな瞳。
スッと通った鼻筋。
焦げ茶色の髪。
一般人とは思えないほど、
綺麗な顔だった。
あのシルエットが未だに忘れられないでいる。
もう、あれから2年も経っているというのに。
私はあの人にあの時間違いなく
おちてしまっていた。
たった一度の出会い。
初めて会った。
何も知らない彼のことを
好きになってしまったんだ。
あの時のことを
彼は今でも覚えてくれているだろうか…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!