「先生、日誌です。」
「おーお疲れ。じゃあまた明日」
「はい。さようなら。」
…………。
頭から離れない。
ずっと。
2人が抱き合っていたなんて…。
…!だめだめッ!やめよう。
いくらわたしが考え込んだってなんにも、ならないんだから。
……あ、日向さん。
中庭の木陰で静かに絵を描いていた。
だめ。
聞いてしまったら、日向さんを傷つけてしまう。
…だけど、
「あの…っ」
「……は、い」
「あ……えっと…。部活?」
「はい」
「…上手だね」
「…あ、ありがとうございます」
……ねえ、日向さん。
「…悠とは、どう?」
「え…と。…あの…」
もっと、ゆっくり、
「一ノ瀬先生とは?」
「……えっ」
立ち止まっていいんだよ。
「ごめんなさい。偶然知っちゃって…」
「…っ」
「…悠を傷つけないでね。…日向さん、自身もだよ。」
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はぁ…。言ってしまった。
こういう落ち込む日は大抵、夜自分の家の窓の外から空を眺める。
そうすると、なんだかちっぽけな感じがして心が軽くなる。
「はぁ…。」
「…あれ?あなたや」
「え?」
悠!
悠も自分の部屋の窓を開けたみたいで、お隣さんあるある。
窓を開ければ会話ができるが発生した。
「…なんか、久しぶりやね?」
ど、どうしよう。
「そ、だね。…ちゃんと毎日遅刻しないで行けてる?」
「行けてるでー。ギリギリやけど。…最近は、上手にネクタイも結べてる。」
ズキ…………。
「…そっか!よかった」
「あなた、ありがとう。ずっと、ほんとに…ありがとう。」
……悠
「……あの、」
「悠ーまだ起きてるのかー?」
「あ、父さんもう寝るで!じゃああなたおやすみ」
「…うん。おやすみ」
……これでいいんだよね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。