第4話

恐怖
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2018/03/20 12:36
あなた

待って。怖い。誰か助けて…。

『誰か倒れているぞ!おいっ!救急車を呼んでくれ!』



そう言って騒いでいる男の人の声で我に返った。
あなた

ゎ私の、妹なの!

ガードレールに突っ込んだ白色のトラックに駆け寄る。


妹は、まだ意識があった。
だが、苦しそうに呼吸をしている。彼女の足を見たら、血だらけだ。
あなた

大丈夫!?

ぅ…ッう。
彼女は小刻みに震え、呼吸は粗かった。
ぉお姉ちゃん…。酷い。早く言ってくれれば助かったのに。
あなた

ぇ。

たしかにそうだ。その通りだよ。
全部私のせい。私が馬鹿だったから、こんなに辛い思いさせて…。


私が本当に大事だと思っている妹なら、自分を犠牲にしてでも、助けに行くだろう。




だけど、私は怖くて見捨てた。
これがおそらく私の知っている内の妹との最後の会話だった。








救急車が来て
警察が来て
トラックの運転手の身内が来て



お母さんの耳に届いたのは、それから1時間後。
お父さんの耳に届いたのは、それから2日後。



『救急隊員です。あなたは、この方の知り合いですか?』
あなた

ぇ、

(そうです)なんてすぐに言えなかった。
その代わりに別の、悪魔の声が出た。
あなた

いいえ。知らないです。

私は、見捨てた。
大事な妹を。

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