第2話

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2023/11/06 07:32
私が友達と出会ったのは、今から一年ほど前のことだ。
いや、存在自体は高校入学時点で知ってはいたのだけれど。
「あぁ!?今日数学テストだったっけ!?」
よく大声でそんな事を言っているのは聞こえていたし、様々な人達と親しく接していたというのもあり、うちの学年の大半が彼のことを知っていた。
私も例に漏れずその一人だったわけだ。
知ってはいても、特に興味がなかったので、仲良くなりたいとも思わなかった。中学の頃、周りの人間関係などを見ていて、若干の人間不信になっていたことも、要因の一つだったのだろう。
だからまあ、あのときの私が見たら驚くと思うのだ。
「ねえ、あなたの下の名前。明日遊ぼー」
「良いよ。私の家でもいい?」
「うん、ドズさんも呼んでいい?」
「元々そのつもりだよ」
だよね、とはにかむ彼に私も薄く微笑む。

そんな情景を思い描くことはなかっただろうから。
「ドズさーん!あーそーぼー」
黒髪の彼が、勢いよく教室のドアを開けていった。
私はいつものことだと、彼の視線の先の相手を探す。
「ぼんさんに黄瀬さん!遊びます!」
そう言って駆け寄ってくる彼はドズルくん。ひとつしたの後輩である。
「ゲーセンですか?」
「うん、そんで明日は私の家でゲームしよう」
「え、いいんですか?」
百八十センチを優に超えているであろう巨体でありながら、目をキラキラとさせている。
うん、私の後輩ってかわいい。
「有り難く思いなさい」
「ぼんさんは威張んないでよ」
黄瀬さんの家なんだから、とジトリと下目をするドズル。
それにしゅんとした様子のぼんさんと呼ばれる彼。
それに私はこうも思った。
うん、同級生もかわいい。
てかこのコンビがかわいい。
真顔でそんな事を考えているとはつゆ知らず、彼等はわちゃわちゃしている。
「ちょっと、早く帰ろうよ。邪魔になってるし」
「「あ、すいません…」」
三人で周りの人に会釈をし、そのまま昇降口へと向かう。
ポケットに入っていたスマホが、ブーブーとバイブ音を鳴らす。
スマホを取り出し、画面を開く。
そこに記された内容に目を通す。
「あなたの下の名前?どうしたー?」
いつの間にか少し前を歩いていた、二人の声にハッとする。
「ううん、何でもない」
スマホをポケットに戻し、足早に駆け寄る。
笑顔を忘れないようにして
うる
うる
ちゃんちゃん
うる
うる
内容が薄くても気にしない
うる
うる
じゃな

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