"誇り高きエリュウス族35代族長
ステラ・レグリシオンここに眠る"
古びれた墓にはそう刻まれていた
ここに来るのも随分と懐かしい
墓に手を伸ばし、刻まれた文字をなぞる
唐突に話しかける俺の思いを読み取ってか主様は続きを促すように仰る
その日、次から次へと湧いてくる天使を相手に俺たちは戦っていた
ザシュッ
シャララララ、バシュッ
メキメキ、べキッ
バゴッ
斬っても、斬っても現れる敵
精神的にも体力的にも俺たちは追い詰められていた
天使の攻撃を避けきれず脇腹に傷を負った
それがいけなかった
ひるんだ所に逃げ場のないほど天使が周りに集まり、俺に腕を振り下ろす
ステラの悲痛な叫び声にここで終わるのかと目を閉じる
死んだ…はずだった
しかし、いくら待ってど想像した衝撃は来なかった
代わりに漂うのは生臭い血の匂い
恐る恐る目を開けてみるとそこには
俺を庇い、天使に身体中を貫かれ、血を流すステラの姿だった
目の前の光景に理解が追いつかず、思わず呆然とする
しかし、その間も彼女は天使にあちこち貫かれた状態で鎖を掴み…
シャララ、ズババババ
ボトボト
天使を…一掃した
ドサ
その瞬間我に返り、崩れ落ちた穴だらけのステラの体を抱きしめ、必死に呼びかける
呼びかけても目は虚ろで、抱きしめた体からは命が消えかかっていた
一瞬の隙が生んだ悲劇
それがステラを……
その事実が頭をよぎり、目からは涙があふれる
謝罪の言葉を口に出した時、ステラがこちらを向き、小さく口を開く
バチッ
その時、左手に鋭い痛み感じた。そして、ステラは俺の襟元を掴み、怒鳴る
最後の力を振り絞って
血を吐き出し苦しみながらもステラは続ける
涙を零しながらも力強く頷くとようやくステラは小さく笑った
話しているうちに握る手の力は消えていく
目に色はなくなっていき、命の終わりが近いことを知らせる
微笑んで最後の言葉を告げる
そうして、目の光は完全に消え、体の力は抜け切った
ステラは……俺の腕の中で静かに息を引き取った…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。