第26話

烏野高校with山口忠
2,243
2019/05/11 14:59
山口side
今日は部活がないから谷地さんには自分から会いに行くしかない。でも、昨日水樹さんに放課後あいてる?って聞かれて部活って答えたから今日はあいてるよって言った方がいいのかな…
でも、今日は聞かれてないしな…
あっという間に放課後になって俺の心臓はばくばくと激しく音を立てていた。振るほうもかなり勇気がいるんだ
山口 忠
谷地さん、ちょっといいかな
谷地 仁花
は、はい!今すぐ!
荷物を持って走ってきた谷地さん
山口 忠
場所変えようか
2人で並んで非常階段を目指して歩く
ぱちっ
と、水樹さんと目があった
けど、逸らされた
やっぱりあれは昨日の気まぐれだったのかな…
谷地 仁花
あの、昨日の返事、だよね?
山口 忠
うん
考えたけど、やっぱり
山口 忠
俺、好きな人いるんだ。だから気持ちには応えられない。ごめん
谷地 仁花
…うん。私の気持ち聞いてくれてありがとう!山口くんこれからも部活仲間としてよろしくね!
山口 忠
うん
谷地さんが泣きそうな顔で笑った。踵を返して歩いていくのを見送ってその場にしゃがみこむ。
緊張した。明日からしばらくは部活でもきっと気まずいだろうな。谷地さんもあんまりそういう切り替えうまくなさそうだし
10分くらいそこにとどまっていた。気づけば校内の喧騒がどこかへ行ってしまったみたいだ。
立ち上がって、今日はもう会えない水樹さんのことを考える。明日、告おうかな…







伊織side
えーーーーーっと、え?
只今放課後、頭の中整理中です
さっき山口くんと谷地さんが2人で歩いてるのを見てしまった。山口くんと目あったけどすぐ逸らしちゃったし
あの2人付き合ってるの?
告白、する前に振られちゃったのかぁ
誰もいなくなった教室で、涙目になりながらそんなことを思う
こんなとこで待ってたらラブラブな2人を見ることになるのか…
水樹伊織
帰んなきゃ…
忠って呼びたかったなぁ
1回くらいいいよね
水樹伊織
忠…
ガタンッ
水樹伊織
?!
山口 忠
な、なに?
水樹伊織
え?
山口 忠
今、忠って言わなかった?
水樹伊織
いや、言ったけど…
 地獄耳?!
山口 忠
あの、…
水樹伊織
あ、おめでと!山口くん谷地さんと付き合ってるんでしょ?じゃあ、私帰らないといけないから…
思ってもいないことが口からポンポンと出てくる。自己嫌悪に陥った。早く1人になりたくて、走って教室を出ようとしたのに…
山口 忠
ま、待って
ドアの直前で山口くんに腕を引っ張られて止まった。今振り返ったらやばい。泣いて顔がぐちゃぐちゃ
山口 忠
谷地さんとはなんもないよ
水樹伊織
え?
驚いて振り向いてしまった
水樹伊織
あ、…
山口 忠
はい、これ
そう言って山口くんはティッシュを渡してくれた。
山口 忠
俺、水樹さんのこと好きなんだ
水樹伊織
?!
え?!今なんて言ったの?聞き間違い?
山口 忠
俺と付き合ってもらえませんか
冗談なんて感じない。真剣に私に向き合ってくれてるのがわかる。
1番、欲しかった言葉
一度止まった涙がまた溢れてきて、それに戸惑う山口くんがとても可愛かった
水樹伊織
私ね、山口くんのこと好き。ずっと好きだったの
山口 忠
え、じゃあ…
水樹伊織
…こんな私でよければ、お願いします!
山口 忠
え?嘘、夢じゃない?
水樹伊織
夢じゃない
山口 忠
ほんとに?水樹さんが俺の彼女?
水樹伊織
そうだよ!
山口 忠
…やば
水樹伊織
なに?
よく聞き取れなかったけど、耳まで赤い山口くんに気づいてしまって恥ずかしくなってきた。1年間ずっと好きだった人の彼女に慣れて幸せすぎる
水樹伊織
一緒に帰ろ?
山口 忠
……
水樹伊織
山口くん?
不安になって顔を覗き込むと、
山口 忠
あ、あのお願いがあるんだけど
水樹伊織
どうしたの?
山口 忠
もう一回、忠って呼んでくれませんか…
なぜ、敬語
水樹伊織
うん
放課後の教室、夕日に照らされる山口くんの顔を真正面から見つめる。ああこの人の彼女になったんだなぁ。とか思いながら
水樹伊織
…………忠
山口 忠
…ありがとう。帰ろっか













伊織
心臓が止まるかと思った
私の手を引っ張って先を歩く山口くんはやっぱり耳まで赤くて、なんだかこっちまで恥ずかしくなる。
これからもずっとそばにいてね、忠

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