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第9話

まだ、知らない
もう少しで、家に着いてしまう。

こんなに名残惜しくなるなんて、思わなかった。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(もう少し、話していたかったな)
福原 雪哉
福原 雪哉
……
福原くんは、辺りを見回しながら、何かを考えるように黙り込んだ。
福原 雪哉
福原 雪哉
茉莉花ってさ、いつもこの道使ってんの?
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
うん、そうだよ
福原 雪哉
福原 雪哉
そっか
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
……?
福原 雪哉
福原 雪哉
なんか、人通り全然なくて、危なくないか?
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
そう? 明るい時は、結構人が道に出てるんだけど
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
そういえば、暗くなってから歩いたことは、そんなにないかも
福原 雪哉
福原 雪哉
うーん
先ほどよりも深く考え込んでしまう福原くんに、首をかしげる。
福原 雪哉
福原 雪哉
あのさ、これから、遅くなる時はまた俺が送っていい?
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
え!? いいよ、いいよ! そんなに迷惑かけられない!
福原 雪哉
福原 雪哉
迷惑とかじゃなくて、俺が嫌だから
福原 雪哉
福原 雪哉
放課後、茉莉花は俺の彼女でしょ?
ポンッと顔に火がつく。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(暗くてよかった)
福原くんにとっては、きっと重要な言葉じゃない。

理央さんっていう女の子をかわすために、私を巻き込んでしまったことに対する、責任感があるというだけのこと。
私が過剰に反応してしまっただけ。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
ありがとう。それなら、今日みたいに遅くならないようにしないとね
福原 雪哉
福原 雪哉
あれっ、楽しかったのって俺だけ?
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
まさか! 私もすごく楽しい!
福原 雪哉
福原 雪哉
よかった。またこうやって喋りながら帰ろうな
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(……あれ?)
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(なんとなく、話が噛み合ってないような気がする)
隣を見ると、綺麗な横顔が笑っている。
暗いところでも、彼の髪の毛が黒くないのが見て取れる。
風が吹くと、サラサラと揺れる。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(不思議。ずっと、見ていただけの人なのに)
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(話をすることなんて、なかったはずなのに)
家が見えてきた。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
あっ、うち、あそこなの
福原 雪哉
福原 雪哉
案外近いんだな
近くはないはず。

だけど、私もそう思った。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(今日は、帰り道がすごく短く感じた)
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(もう少し、一緒にいたいと思ってしまった)
玄関先で、福原くんがきびすを返す。
福原 雪哉
福原 雪哉
じゃあな
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
送ってくれて、ありがとう
福原 雪哉
福原 雪哉
うん
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
気をつけて帰ってね
福原 雪哉
福原 雪哉
大丈夫だよ、俺、男だし。そんなに遠くないしさ
後ろ姿が、こちらに向かって手を振る。
福原 雪哉
福原 雪哉
また明日
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
う、うん! 明日……!
背中が小さくなって、見えなくなるまで見送る。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
また、明日……
同じ言葉を、噛み締めるように呟いて、胸に手を当てる。
もうそばにいないのに、声が離れない。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
(胸の音、うるさい)
明日になれば、また会えるのに。
吉岡 茉莉花
吉岡 茉莉花
放課後まで、我慢……
さっきまで一緒にいたのに。

出会ってもないのに、離れがたい。
もう声が聞きたい。
笑顔が見たい。
感じたことの無いこの気持ちの名前は、まだ知らない。