ーッダンッ!
はぁ、また転んじゃったよ…
リハビリって上手くいかないよね…。
何回も、足を動かせるように頑張っているのに
どうしても転んじゃう。
ー前に進むことすらまだ儘ならない。
また、立ち上がり歩こうとする。
しかしー、毎度結果は同じ事。
ーッダンッ!!!
もう一度…そう思い立とうとした。
その時だった
スッと目の前に手が現れ、上を向いてみる。
そう言って笑う男は手を差し伸べた
状況が何故か読めない…。
何で…何でだろう…
そう考え事をしていて立とうとしない育に
待ちきれなくなったのか男は育の手をぐいっと
掴み無理やり立たせた
いきなり立たされまだ歩けない育はバランスを崩す
すると、男は育を抱き寄せた
男は、手にギプスをしていた。
みた感じどうやらこの病院の患者らしい
ーでも顔と声…何処かで…
男は、外のベンチを指差す。
…………………………
いかにも、自分の事を知っている。という感じだ…
するとその言葉に男は驚く
そ、そんなこと言われても…
覚えてないものは覚えてませんよ!
昔ーよく遊んでいた…
ベッタリくっついていた…
何でもあなたの真似をしていた…
引っ越した…
ーあなた…まさか…
湖乃木 磨衣(このき まい)
彼は私の3つ上の男の子…
小さい頃一緒に毎日遊んでいて。
でも、私が2年生の頃突然引っ越して…。
磨衣はそう笑う。
いつだって、磨衣は笑っていた。
私が小さい頃一緒に遊んでた最中倒れてしまった時
そんなときだって、心配してくれた。
だけど、笑って私の事を見守ってくれていた
引っ越しの時だって号泣していた私を
笑って慰めてくれた
「またいつか会えるから。そしたら遊ぼうな」
そう言って、私の目の前から消えていった
最後まで笑って。
磨衣だって悲しかったはずなのに
磨衣の笑顔はずっと私の心の中で光っていた
その笑顔は忘れる事は無いはずだった。
でも、予定に無かった事は起こる。
伸太朗と会って、新しい歯車は回って。
ー磨衣の事を忘れるくらいに伸太朗に恋をして。
でも、もう一度磨衣の笑顔を思い出した。
幼い日の事がフラッシュバックして甦る
忘れていた…想いすらも甦って。
あなたは…磨衣は私の初恋の人なんだ…と…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!