第59話

最後の一ヶ月
322
2026/09/16 10:00 更新
正式通知から5日後。

第七部隊区画。


不思議なことに。

生活そのものはあまり変わらなかった。


朝起きる。

訓練する。

任務に行く。

飯を食う。

寮に帰る。


いつも通り。

本当にいつも通りだった。



ただ一つ違うのは。

全員がどこかで残り時間を意識していることだった。
Tigusa
あと25日かぁ…
ちぐさがカレンダーを見る。



赤ペンで丸が付いていた。

解体日に。



誰が書いたのかは知らない。

でも消されることもなかった。
Vau
数えんなよ
ばぁうが言う。
Vau
余計早く感じるだろ
Tigusa
いや…気になるし
Light
まぁ分かる
らいとが頷いた。




訓練場では今日も模擬戦が行われている。




相手は、大阪を拠点に置く第三部隊。


若手中心の部隊だった。
mb
始め!
審判の声。


次の瞬間。

第三部隊が一斉に動く。


かなり良い連携だった。

最近、成長が著しいと聞く。


だが。
Rinu
…左
莉犬が一言。


その瞬間。

ちぐさが動く。


風を利用して一気に加速。

相手の側面を取る。
隊員
うわっ!?
第三部隊の一人が慌てる。


そこへ。
Pretz
はい、終了
ぷりっつの植物壁。

退路を塞ぐ。


さらに。
Vau
逃がさねぇよ
ばぁうが前へ出る。

血の槍を持つ圧力だけで相手が足を止めた。
Light
終わりやな
らいとの雷の一撃。


試合終了。

開始から30秒も経っていなかった。

観戦していた隊員達がざわつく。
隊員
やっぱ強ぇ……
隊員
意味分からんって
隊員
連携がおかしいんよ
そんな声が聞こえてくる。


第七部隊は聞き慣れていた。

だから、特に気にしない。
Tigusa
お疲れー!
ちぐさが戻ってくる。
隊長
お前ら、ほんまにやりにくいわ
第三部隊の隊長が苦笑した。
Vau
褒め言葉っすか?
ばぁうが笑う。








隊員
解体されるって…本当なんですか
突然。

若い隊員が聞いた。


空気が少し変わる。

その隊員は慌てた。
隊員
あ、すみません…!
隊員
自分、つい気になって…
Rinu
いや、いいよ
Rinu
聞かれると思ってたし
莉犬が答える。



 






Rinu
…本当だよ
静寂。

若い隊員達の顔が曇る。
隊員
何で…ですか
隊員
第七部隊は全員が10代という若さなのに、国トップの実力を持ってる部隊って…
隊員
僕らも尊敬している部隊で…
隊員
そんな最強部隊が…なんで…
その質問には誰も答えられなかった。


正確には。

答えが一つじゃないからだ。

国家の事情。

組織の事情。

戦力の事情。


全部正しい。

全部間違っていない。


だから難しい。
Lapis
まぁ…
らぴすが笑った。
Lapis
そういうこともあるしな
隊員
納得、できるんですか
若い隊員が聞く。

らぴすは少し考えた。

そして。
Lapis
できるかできんかで言えば…微妙
正直だった。
Lapis
でも…
空を見上げる。
Lapis
俺ら、アークやしな
隊員
……
Lapis
「対魔獣特殊防衛組織アーク」、略してアーク
Lapis
ただ、元々の組織名は「対魔獣組織ark」やった
Lapis
「ark」は、ノアの箱舟って意味
Lapis
救いの手段、安全な場所ってことやし
Lapis
安全な場所であるアークに、国家壊滅をもたらす可能性が存在したらダメなんよ
隊員
そんなッ…
Lapis
……命令なら、従うわ
若い隊員は黙った。

その顔を見て。

ばぁうが笑う。
Vau
そんな顔すんなって
隊員
え?
Vau
まだ終わってねぇよ

そう、まだ終わっていない。

残り25日。

第七部隊はまだ存在している。
その日の夜。

食堂。

珍しく全員が揃っていた。
Light
…で
らいとが言う。
Light
お前ら辞令見た?
全員の動きが止まる。
Tigusa
…あ
Vau
見てねぇわ
Pretz
完全に忘れてたわ…
Lapis
…俺も
莉犬が呆れた顔になる。
Rinu
あのねぇ…(笑
正式通知から5日。

誰も開けていなかった。
Vau
いや嫌だよ、辞めろって言われてるもんだし
ばぁうが言う。
Vau
見たら実感湧くじゃん
それは全員同じだった。

だから誰も責めない。


その時。

食堂の扉が開いた。


本部長だった。
アーク.長
全員いるな
嫌な予感。

6人同時に思った。
Vau
また面倒事っすか
ばぁうが呟く。
アーク.長
聞こえてるぞ
Vau
さーせん
全く反省していない声。

本部長は小さくため息を吐いた。


そして、机の上に資料を置く。
アーク.長
明日から
6人を見る。
アーク.長
最後の合同任務だ
空気が変わる。


最後。

その言葉が重い。
アーク.長
北海道で大規模魔獣発生
本部長が続ける。
アーク.長
危険度A+級
全員の目が変わる。

任務の顔になる。
アーク.長
第二部隊の拠点だが…第七部隊にも出動命令が出た
ばぁうが笑った。
Vau
最後の合同任務か
らいとも笑う。
Light
派手に行こうや
ちぐさが立ち上がる。
Tigusa
北海道かぁ…海鮮丼…!
ぷりっつは資料を確認し始める。

らぴすもそれを覗き込む。

莉犬は本部長を見る。
Rinu
了解しました
その返事に。

本部長は静かに頷いた。



残り24日。


第七部隊最後の任務が始まろうとしていた。

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