私はユウのことが、ときどきわからなくなる。それでも、問い詰めたりしない。そんな女々しいことはしない。
あなたの口からどんな言葉が飛び出すか。なによりそれが怖かった。
ユウが入院している間、私は自分のアパートへ帰った。ひとりの空間。必然的に考える時間が増えた。
いつかユウのほうから離れていくときが来るかもしれない。大切なものが消えて無くなる恐怖。
この五日間、私はそんな日が来てもいいように、すこしずつ心がまえをすることにした。
ユウという存在が私からなくなっても、それが当たり前の日常だと思えるように、ちゃんと耐えていけるようにーー。
覚悟しなければならない、と思った。
いつかくるかもしれない別れのために。
いつかくるかもしれない悲しみのために。
だいじょうぶ。どんな未来でも受け止められる。
うつむけていた顔をあげた。視線をそっとユウに移す。彼はやはり空を見つめていた。
真っ直ぐな眼差し。とても綺麗だ。まるでそれ自体が輝きを放っているように、ユウの瞳はまたたいていた。
あなたの見つめる世界。そこに、私の姿はあるのだろうか。あなたの見つめるその未来に、私はいるだろうか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。