男達が何やら不満そうな顔で風呂場から出てきた。
結局、ボクらはおれあとリニージオのいる班に入って、一緒に入浴することになった。
脱衣所は、気持ち悪いくらい綺麗。
風呂場は温泉みたく広くて綺麗で...密閉されてた。
ガラス窓の外からは、風に葉が揺れる。
開閉はできないみたいだから、ナイフで傷をつけてみたけど擦り傷ひとつつかない。ダメだった。
そして気になる点はもうひとつ。
さっきから、女の子がボクの方をじっとみてる。
リニージオが、その子に声をかけた。
「カゲ」と名乗ったその子は、表情ひとつ変えずにボクの目を覗き込んできた。
何を考えているのかなんて特に興味はなくて、思考を読む気もなかった。なのに、脳には言葉が流れ込んでくる。
下手くそな言葉で並べらえた台詞が、頭いっぱいに広がった。
少し混乱はしたが、パニックというほどでもなかったから適当に正論をぶつける。
そうだ、ボクとカゲは初対面。なのになんで友達だなんてきいてくるんだろう。不思議だ。
ふと、おれあに声をかけられた。
会話はそこで終わった。
カゲは次に、リニージオへと声をかけた。
カゲは小さく頷く。
リニージオも、あまり興味はない様子。
ふと、リニージオが見ているものに目が行った。
どこを見ているかなんて気にならなかったが、リニージオの見ている方向にあるのは脱衣所の時計。
そんなリニージオに声をかけたおれあは、リニージオが指差す方向を見て再び口を開く。
まぁ、だろうな、とは思った。
言われてみれば確かに脱衣所にしては湿度が低いなとも思ったが、誤差だと思えばなんともない。
声をかけてきたのは玲愛だった。
そう返答すれば、「そうなんですね」と玲愛は笑う、
昔見た笑顔と同じそれが、どこか寂しくて。
用意されていた服は、自分が着ていた物と全く同じものだった。君が悪いが、前の服はそこにはない。正しく畳まれたそれがあるだけだった。
ノイズ混じりの声が、ボクらを出迎えた。
おれあがそう言えば、皆「確かに」と違和感に気づく。
皆口々に違和感をあげていく。場の賑やかな雰囲気に悪い気はしないが、うるさい場所は嫌いなので少し距離を置く。
ただ、ボクにもひとつ確かな違和感があった。
その「違和感」と似たことを、真が代わりに言った。
ボクがその言葉につけたしをするように言えば、みんなは「マジか」などと驚いているようだった。
そう言ってみれば、試す者や質問をしてくる者、参考にと置いてあった日めくりカレンダーの裏にメモをする者などたくさんいた。
たくさんされる質問やそれについての話題についての中に紛れて、小さく呟くような声が聞こえた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。