ドアの開く音がすると幾葉さんの明るい声がした。
帰ってきた。
声に気がついた日向さんは立ち上がり玄関までお迎えに向かった。
私も日向さんの後ろに続いた。
笑顔で返事をし返すと私の頭を撫でた。
もちろん、しっかりと話を聞いていましたとも。
日向さんはニヤリと幾葉さんの顔を見た。
私達はテーブルを囲んで座った。
今日の夕食はカレーライス、いい匂いが部屋中に漂っている。
ただそれだけなのにこんなに幸せな気持ちになれるのはどうしてなんだろう。
礼儀正しく手を合わせて私は口の中にカレーライスを運んだ。
やっぱり誰かと一緒に食べるのは、1人で食べるよりとてつもなく美味しく感じる。
日向さんが突然大きな声を出してスプーンで幾葉を指さす。
とくに食らいつき返す訳でもなく、幾葉さんは平然とカレーライスを食べながら言った。
…日向さん凄く怒ってる…。
一体どんな人なんだろう。
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今でもハッキリ覚えている、満面の笑みで、ナイフを持って、私のところに、駆け寄ってきた。
あの男の子のことか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。