憎丿都市 10時56分 【松】
帰路につく寸前にそれは起こった。
それは予兆もなく起こってしまった
それが一体何だったのか
誰にも理解できない。
瞬く間に太陽が光ったと思えば、次の瞬間には
辺りは暗闇に包みこまれた。
その一時にして、人も何もいなくなった。
こいつら以外は...。
このあたりに人はいない。
通信機器は使えるようだが、...
わぁお。ジェネレーションギャップ。
だがしかし、いうて18歳と14歳。
周りから見れば4歳なんて変わんねぇよばーか!という具合だろうが。
一人は年を偽っているのでもう少し離れている。
体はピチピチの子供だぞ!
こうなれば話に終点はない。
別解がどこかしらに隠れている。
あれやこれやと話す中、カルペは辺りを見回す。
その次に細かい隙間に「ソレ」がいないかを探し、
緊張で重くなった口を開く。
風が吹いた。
背筋を凍らせるような
例えるならば、
冷たくて
苦しくて
死にそうな、獣の鳴き声
背後から声がして、カルペは咄嗟に振り向く
アルナはゆっくりと後ろに視線を向けた。
彼はカフェの突き出し看板の上に座っていた。
優雅に、そして呑気に。
反応するところが違う。
ふと思いついた疑問を投げかけてみる。
そうやって、蟻で遊ぶ男児のように笑う
その時に、空の色がもう数センチ深くなった気がした。
そんな気をさせるような、不気味な顔を、彼はしていた。
何時までも彼は看板から降りてこないので、
見上げている首が痛くなってくる。
それは穏やかだった。
穏やかな死を迎えた。
神はやってきた。
それなのに、神は何も救えなかった。
神は彼を見た。同時に、彼は神を見た。
そういうものが、ある世界になってしまった。
―滴り落ちる血液を少しだけ手に取る。
ベタッとした生ぬるい触感がやけに気持ち悪い。
それはすでに死んでいた。
四肢が切り離され、目玉がえぐられ、頭蓋骨が割れて液体が流れ出していた。
腐った肉の異臭。吐き気がしそうだ。
ふと、手についた血液を舐めてみる
クソ不味い。
カニバリズムの奴らは異常なくらい見てきたけども、
やはりああいうものは味覚が狂っているのだろう。
さてと、まずこの死体が誰かを調べようか....。
紹介しよう。
こちらはノワール、通称ノワル。ゲルニカとは何も関係ない中央政府の関係者である。
人口レーテすら持たない一般人。ただし面白いことに運が良い。
今ここは外部ゲルニカ管理人室、結構前に言っている無響室だ。
扉には鍵がかかっている
どうやらその外に大量に人が押しかけているらしい。
仕事終わった!やった!と思って扉を開けたらこの死体が足元に吹っ飛んできたのだ。ついでにノワルも。
馬鹿じゃないのか。
まぁ、どうせここから出なければいけないことは確定しているし...
それなら別に後でもいい。優先順位をつけるのは大切だ。
...この死体あんまり重要でもないな。
少し弄ってわかったことだが、内臓がすべてない。この死体。
なのに外傷は頭に集中している。胴体が引き裂かれた感じはない。縫われた感じも。
もう死体は用済みだから放っておこう。
なにか持っておくと良いもの...携帯と、あと...
今の時期寒いしカイロでも持ってくか。
やっぱ荷物になるしやめよう。
鍵を開ければなだれ込んでくるだろう。
まぁ、ぶっちゃけ死んでもしにきれないだろう。"寄生できれば"の話だが。
ノワルは運が良いし多分死なない
というか死んでも興味がない。
やけに思考がくるくる回る。
こういうときだけ、脳は活性化する。
自分が嫌な人間であることはつくづく分かっているけれど
まぁ、それもどうでもいいか。
時間はないし、先を急がなきゃならないし
疑問をぶつける。
ドアの鍵を開けながら。
口から正直に出た問を誰も拾うことはなかった。
誰も。
彼もね。





















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!