第3話

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2019/01/04 13:32
「ど、どうしよう、この血痕……」
とりあえず血はシャワーで流して、血のついたカッターナイフはティッシュでくるんでゴミ箱に捨てた。
「手……止血……お母さんに見つからないように……」
家の救急箱をひっくり返して、ぴかぴかの包帯を見つけた。まだ誰も使ってないみたい。
その包帯で手首を巻いて、指までテーピングで縛った。突き指したって言い訳が使えるように。
「なんで……リストカット?なんかしちゃったのかな」
不思議と痛くない。そこがじんじん疼いて、熱を持って、変な気分だった。
でも、なんか……
「キモチイイ……」
その鼓動に不安が紛れていくみたいな安心感。
でも、跡が残ったら嫌だし、これ1回きりにしよう。そう誓って、ご飯を食べて風呂に入って、その日は寝た。
翌日、朝練があるから早く起きてツッキーとの待ち合わせ場所に向かう。
「あっ、ツッキー……」
ツッキーは俺に気づくと、つけていたヘッドフォンを外して口を開いた。
「おはよう」
「うんっ!おはよ」
俺は思い切って、昨日の子のことを聞いてみることにした。
「ツッキー、昨日の子……どうだった?」
「別に。フッたけど」
「やっぱり、そうだよね!」
ツッキーは、必要以上のことを喋らない。誰にも。
俺にも話してくれないのは当然だけど、ちょっとたよられてない感じがして凹む。
あの子がなんと言っても、ツッキーが拒み続けるはず。なんたってツッキーは烏野高校最強のブロッカーだからね!!
「あのさ……ツッキー、あの……」
「なに。言いたいことあるならさっさと言って」
「ツッキー、好きな子いるの……?」
言ってしまった。勢い任せに。
「は……何急に。そんなのいるわけ……」
「でもツッキー、好きな子いるって!言って……た」
しまった。これじゃあ、盗み聞きしてたって言ってるようなもんだ。
「お前……盗み聞きなんかしてたの?信じらんない」
「あ……違……」
「違くないっ!!」
「……」
「……人のプライバシー除くなんて、信じらんない。そんなやつだったの?」
「……」
「……黙秘かよ。第一、僕に好きな子がいたって、お前には関係ないだろ。……もう、いい」
「待ってよ、ツッキー!!」
ツッキーはヘッドフォンをつけると、スタスタと行ってしまった。ツッキーは足が長いから、俺は小走りじゃないと追いつけない。
「ねえっ、ツッキー!!」
無視。そりゃそうだ。誰だって、告白の現場なんか見られたら怒る。でも、でも……俺、ツッキーに嫌われたら……
「生きていけないよ……」

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