「きゃああああああああ」
誰もいない校舎内に女の子の悲鳴が響き渡った。
その声の主は杏だった。
「杏⁉︎」
私達は急いで図書室へ入ると、杏の姿を探した。
そこには床に倒れ、頭を抱え何かに怯える杏の姿があった。
「杏、どうし…」
恐る恐る視線を下ろす…
生温い温度。慣れないツンとした匂い。湿った指先。
杏の腹部を水源とし、溢れ、染み渡る“血”
「助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けてよぉお!!」
そうか、人は死に直面するとこんな風になるのか。
しゃくりあげるようにし泣く杏の声は悲鳴と化し、もう手の施しようの無いほど恐怖に埋もれていた。
「おい、杏!!しっかりしろ」
すかさず彼方が私の横を通り越し、杏の元へ駆けつけると傷口に手を当て止血しようとする。が…
「は?」
「もうやめて!!!杏はもう助からない、放っておけば勝手に死んでるよ。だから彼方…もうやめて」
彼方は一瞬目を見開いた。
「は、何言ってんだよお前…」
彼方の発した言葉に肩を落とす。
そっか、彼方は…杏が好きだったんだね
私は唇を噛みながら彼方と杏を見ていた。でも…ごめんね?私、今は少しだけ普通じゃないのかもしれない。
不意に視線を落とすと血に汚れた包丁が私を誘うに転がっていた。
「はは…ふはっ、ははは…」
そういうことでしょ