視点:初兎
あれから数日が経ち、俺らは日常へと戻っていた。
今日はまろちゃんに部屋へ来て欲しいと言われた。
2人で話すことなんて珍しいから何だろうと思いながら部屋をノックする。
返事なし。
おらんのかな?でもまろちゃんが呼んだわけだし…
そう言って部屋に入り、目に留まったのは……
椅子に座りながら眠っているまろちゃん。
直前まで本を読んでいたのだろうか、足元に本が落ちている。
……なんか、珍しい風景やな。
てかこれ、起こしてええんやろうか…?
いむくんとか、寝落ちしたないちゃんとかは見たことあるけど、まろちゃんが俺らの前で寝てるのは見た事ない。
それに……いや、今は辞めとこう。
それよりも、
「そこ座って」と言われたので、ベッドの上に座る。
以前、俺が暴走した時に起こったことだと聞いている。
人間に戻れば、きっともう自我を失い、暴れる事はなくなる。
今のままでいたら、いつか再び先祖返りが起きた時に魔物になるかもしれない。
……でも、訓練さえすれば、魔物の力を使いこなせるかもしれない。
…マジかよ。俺生きていけるんかな…
案の定いむくんとプチ喧嘩になったのはまた別の話。
ちゃんと仲直りしたし、その後一緒にシュークリーム食べたから大丈夫よな?
でも、これこそ喧嘩するほど仲が良いってやつだと思うんよ。
俺はいむくんの事大好きやし、いむくんも俺の側にいてくれる。
そしてこの関係は、未来永劫変わることはないって信じてる。
でも…いむくんだけやなくて、他のみんなのことももっと知りたいなぁ……
いつか、知れるだろうか……
特に…
薄らと見えた、まろちゃんの隈の事とか…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。