Noside.
緑谷「あなたさ…………!?」
電源が切れたように突然瞼を閉じた彼女を見て、サアアッと緑谷の身体の内側に寒気が駆け抜ける
慌てて口元に耳を近づけた
自分の心臓の音が激しく脈打つ中で、辛うじて間隔の広い掠れた呼吸音を拾った
轟「緑谷!!あなた姉は…………!!」
遅ればせながら、あなたの異変を察知した轟が顔面蒼白で駆け寄ってくる
冷や汗がまだ乾いていない顔を歪ませ、腰の小さなポシェットから白いハンカチを取り出した
緑谷「大丈夫、まだ息はしてる……気絶してるだけみたい
けど胸元の出血が酷い……すぐに治療を受けさせないと…!!」
あなたの制服のブレザーだけ脱がし、傷跡に沿って避けたワイシャツの部分の血をハンカチで慎重に拭き取る
倣うようにして轟がそこに包帯を巻くと、大きな衝撃を与えないようそっと抱き上げた
立ち上がった拍子に、あなたの腕がだらんと重力に従って落ちる
緑谷「取り敢えず大通りに出よう。轟君はあなたさんを。ヒーロー殺しは僕に任せて……」
グラントリノ「な、なぜお前がここに!?」
話しながら路地裏の入り口まで出てきた時、緑谷にとって聞き覚えのある声がすぐ近くで木霊した
緑谷「グラントリノ…!!」
グラントリノ「新幹線で座ってろっつったろ!!!」
ぎゃん!と効果音が付きそうな程に吠える一見ご老人なヒーローを、轟は瞳の奥に少しきょとんとした表情を宿し「知り合いか?」と隣のクラスメイトに問いかけた
緑谷「僕の職場体験先の担当ヒーロー、グラントリノ……でも何で、」
グラントリノ「いきなりここに行けと言われてな。まあよく分からんが取り敢えず…無事なら良かった」
ドクドクと未だ波打つ心臓を抑え、ごめんなさい、と頭を下げる
すると幾度もしない内に、今度は複数の足音がその場にフェードインしてきた
プロヒ「エンデヴァーさんから応援要請承ったんだ、が……………………子供?」
プロヒ「酷い怪我じゃないか!すぐ救急車を呼ぶから!」
緑谷「あ、あの!」
轟「俺等より先に姉をっ…!」
プロヒ「雄英生…?」
プロヒ「意識がない……君、その子をこちらへ。あとは任せて」
プロヒ「ん?こいつまさか…ヒーロー殺し…!?」
プロヒ「何!?すぐ警察にも連絡だ!」
傷だらけの子供達に加え今世間を揺るがす犯罪者を連れていた事でその場は更に騒然と化す
ヒーローに抱えられていくあなたを見送りながら、緑谷は轟君、と隣で泣きそうになりながら唇を噛む彼の名を呼び掛けた
轟「………俺、あんな姉さん初めて見た
苦しそうな姉さんを見て、何もできなかった…
大丈夫だよな。姉さん、無事だよな…?」
緑谷「……………あなたさんは強いよ、きっと大丈夫」
いつにもなく弱々しい姿のクラスメイトのその言葉に、しかし彼は大層な事も返せず只々背中を擦るしか出来なかった
そんな時
グラントリノ「___なっ!伏せろ!!」
グラントリノが突然声を荒げたとほぼ同時に、全長2〜3mほどの大きな影が人集りへ突っ込んできた
低空飛行で頭上ギリギリを通ると、鷹のようなその爪で緑谷の肩を引っ掴み、飛び去って行った
体長を優に越える巨大な翼がはためく事で、その場に嵐のような旋風が巻き上がる
プロヒ「脳無……!?」
プロヒ「血が……やられて逃げてきたのか」
風圧でその場に足を縫い付けられたヒーロー達を余所に、緑谷を掻っ攫った脳無はどんどん上空へと昇っていく
誰も追い掛ける事が出来ない。そんな状況下で
たった1人動いた者がいた
____ヌルッ
脳無の血が付着したヒーローの頬を、猫の如くざらついた舌が這う
その直後、突然雷に打たれたように脳無が動きを止めた
それに向かって、ヒーロー達の間を縫って一つの影が地面を蹴り上げる
ステイン「偽物が蔓延るこの社会も
悪戯に力を振りまく犯罪者も__」
真っ赤な瞳をギラつかせ、使い込んだ短刀を振り上げる
ステイン「____粛清対象だ」
鮮血が宙を舞う
脳無の頭に食い込んだ刀は深く、貫通する勢いだった
緑谷「うっ…く、はなせっ…………!」
自身の顔より大きな手で抑えつけられていた緑谷が危険を察知しじたばたと身を捩る
不意にヒーロー殺しがゆっくりと立ち上がって、その拍子に目元を覆っていたボロボロの包帯がしゅる、と舞い落ちた
緑谷「……………………ッッ!!」
誰よりも近くでヒーロー殺しの素顔を捉えた緑谷は、恐怖で全身が凍らされたかの如く硬直する
ある程度の距離を設けるプロヒーロー達でさえも、一瞬息をするのを忘れていた
プロヒ「少年を…助けた?」
プロヒ「バカ、人質を取ったんだ!!」
プロヒ「躊躇なく人殺しやがった…」
プロヒ「いいから戦闘態勢取れ取り敢えず!!」
「何をひとかたまりで突っ立っている」
混乱状態のその場に芯のある声が響く
身体に纏う炎に安心感を覚える、No.2ヒーローが仏頂面で彼らを見据えていた
プロヒ「あちらは、もう?」
エンデヴァー「多少手荒になってしまったがな
…………して、」
"あの男はまさかの?"
彼が視線を投げた先で、ヒーロー殺しは握ったナイフから血を滴らせながら不規則に肩を上下させている
ステイン「ハァ…ハァ…………ッ、偽物ォ…!!」
その姿を目に収めたエンデヴァーが、飛び掛かろうと全身に纏う炎を高く上げるが、既に何かを感じていたグラントリノに制止を受け硬直する
何人も射抜き殺すような鋭利な血の双眸がギラついた
ステイン「正さねば…誰かが血に、染まらねば…」
踏み出した足が地を揺らす
ステイン「ヒーローを…取り戻さねば…!」
吐き出される重低音が、その場の空気を支配する
誰一人と、地面に足を縫い付けられてびくともしない
ステイン「来い…来てみろ偽物ども
俺を殺して良いのは、本物のヒーロー…
オールマイトだけだァァ……!!!」
___カタンッ
停滞していた時の流れが金属音を皮切りに動き出した
その場の一同が意識を取り戻した時には、ヒーロー殺しは最後に見た姿勢を維持したまま、気を失っていた
これは、後に判明した話
この時ヒーロー殺しは、折れた肋骨が肺に刺さっていたそう
誰も血を舐められてなどいなかった
その場にいたヒーロー全員が動けなかった中で
なのにあの場で、あの一瞬で、ヒーロー殺しだけが、脳無に向かって走っていっていた
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無投稿期間4週間突破!!
最長記録突破したぜイエイ!!!
どうもこんにちは。鮎です。
本日は皆様には見えませんが胴体真っ二つ状態でお送りします
セニョリータあなたにバルディッシュで一刀両断にされたんでね。ぴっちぴち²跳ねながら喋……あ、待ってまた振り上げないで本題入るから(切実)
まず第一に、とんでもねえく長い期間投稿せんで誠に申し訳ありませんでした
長期間皆様をお待たせした事切にお詫び申し上げます
えー、なぜこのような事態になったかを簡潔に申し上げて頂きますとね…
我がスマフォのバグと自暴自棄です(←←)
いやね、まず今ポチポチ打っているこの端末サマが執筆途中だったチャプターの保存をしなかったんです
結構スムーズにお話が展開してたもんだから綺麗サッパリ消えてヤンキーもビビる程のガン飛ばしました
プリしょ作者の方々なら分かっていただけるかということを願って、
そんな事起きたら創作意欲地に落ちるの分かります?(泣)
んで、どうにかワンモア書き上げていく事2週間(これは冗談抜きでわちのせい)
今度は学校生活がたてこみました
新歓の準備と何故か増える授業の課題提出…
ついでに父が2週間ほど叔父の結婚式に参加するため海外へ飛び去ったお陰でターンが早まった真夜中風呂掃除☆と皿洗い
5月頃ある英検2級の校内受験のための勉強……
いつの間にか午前2時就寝が習慣化していました
その半分程のタスクが終わり、ようやく投稿できた時は最後の投稿から4週間後…
猫ミームにたまに出てくる叫ぶ直立のカピバラみたいなの知ってます?(語彙力)
数字を認識した瞬間あんな感じで叫びました
時間管理能力カスなの申し訳ない……
本編でも大事なシーンに突入するので尚更慎重になってました……
感覚を治せるよう頑張りますので見守っててください…🥺
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。