第28話

私の三学期明け。
1,453
2021/01/09 10:21
窓の外を見ていた。見飽きた風景。部室の小窓。

窓を開ける。冬の風が肌寒く、朝の空気が心地よかった。

部室のドアが開く。ギギギと大きな音を立てるドア。このドアそろそろ古いよな…。
そんな、日常だった。いつも通りだった。
遊馬
よ、たちば………なっ?!
普通に挨拶をしようとして驚く。思わず地声が出た。目も見開いてるように思う。
そこに居たのは……髪を断髪した橘だった…
遊馬
え、イメチェン…?!ズボン?!
驚きの連続でパニックになる。これじゃまるで…
…………カツラとれ
遊馬
え、え…?
はやく。
遊馬
は、はい…!……?
急な言葉に驚くが、そういえばもう地声でいいのだと高い声を出す。橘もそれに動じず、近ずいてきた。


……展開がよく分からない。ついていけない。イメチェン…?男っぽい性格を隠さないことにしたとか?え、男?いや……それは俺の願望でありまして……
嫌だったら言えよ
遊馬
…………え。
次の瞬間抱きしめられる。我慢をするのを辞めたように、橘の手先が私の髪先に触れた。
遊馬
ちょっ…たちばっ……。
言っておくけど、俺は男だからな。
遊馬
は、はい…!
つい、はいっていったけど……。
は?!待って待って待ってえ。男?!オトコ……漢…おとこ……?!
遊馬
俺の裸見…!
ちょっ。
橘に口を塞がれた。
気持ち悪くなるから俺ってのやめろ。あと……ごめんなさい…/////
もう本当に消えそうな声で謝られる。別に怒ってなんかいないんだけど……。
だから…その。な…?
そんな分かってくれみたいな目で言われても何もかもが分からない。どうして急にこんなこと言われたのか、どうして急に男ということを明かしたのか……もう分からないことだらけですし。
好きなんだよ。お前が…
遊馬
…………ッ!
突然の告白に驚く。
脳が衝撃を受けているのを実感した。
嫌…!

………ではなかった。怖くない。悲しくない。


これは……なんというか……
…………愛…しい?
彼を抱きしめ返す。背中を触り、ぎゅっと引き寄せる。
遊馬
…………なんで…急に……
……俺、片親なんだけど…。お父さんが、ちょっと精神を病んでて。
でも冬休み中に……色々、解決して。それで、三学期からは……男としてって。
急な情報量に驚く。キャパオーバーだし正直実感できてないけど。でも……それって……
遊馬
学校の許可大丈夫なの…………?
…………ww最初にそれ聞くのかw
遊馬
だって気になるし……!
(可哀想だねも、親の事聞かれたりもしない。…………やっぱり、それが嬉しい。)
先生達には申請はしてきた。まぁ驚いてたけど……。
遊馬
まぁそりゃあねw
遊馬
………………そっか。
や、やっぱりいきなりのことで、頭が回っていない。
え、本当に……付き合えた…。んだよね?
なんか……実感わかねぇな。
遊馬
…………わかるw
遊馬
……そっかぁ、じゃあ私も…男装する理由、なくなっちゃったんだなぁ…。
お前は?
遊馬
え?
学校。
遊馬
あぁ、
急な質問に驚く。学校のことか……
遊馬
私の場合はもう恐怖症。あ、男装した理由なんだけど、それについて病院でも取り合ってて、協力してもらってた。
え…?!まじか、
そんなこと出来るのか…。
遊馬
うんうんw
ここの学校結構フリーだからなぁ……。それにしても、
本気で驚く橘が、まるで子供みたいだ。

これが……この可愛いのが、俺の……いや、私の彼氏になるんだ…。
遊馬
(率直に言う。……幸せだ。)

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