ビル街を雑多な音が歩く。物憂げなトーンは時計を推し進めており、現在の時刻は午前10時。
桜田門の官庁街の片隅、警視庁の公安部リア充対策課のデスクで、恋路幸彦はパソコンをいじっていた。
海破茂明は幸彦の様子を見て、感心といったところか嬉しそうな顔をし、そのまま隣のデスクに腰掛けた。
海破は幸彦の直属の上司にあたる。その姿はまさに熟練の刑事といったところで、頼れる存在の一つだ。
幸彦はいたく真面目に返答した。パソコンのタイピングをする手は止めない。
リア充対策課は「リア充撲滅基本法」を地盤にして成り立っている。
法律上のリア充の定義は「公然の場でキス以上、またはそれに準ずる行為をしているもの」
となっている。
幸彦は一人欠けていることに気がついた。
噂をすればなんとやら、入口からぬっと影が伸び、ハイヒールの床を突く音がした。
大祓は両手脇に抱えた紙袋を大きな音をたて、デスクに置いた。
幸彦は袋の中に手を入れようとしたが、ややためらい、そして手を引っ込めてまたパソコンを見た。暗くなっていた画面をエンタキーで元に戻す。
課長のお呼び出しも気になるところだったが、幸彦は目の前の課題を片付けることに集中した。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。