怒鳴る晴くんに、高臣が唖然としている。
小声でそう教えてあげると、
晴くんが「あ!」という顔をする。
でも、そこはさすが執事とも言うべきだろうか。
完璧な笑みでブラック晴くんをスルーすると、
一礼して私の部屋を出ていく高臣。
顔を引きつらせていると、
グーッとお腹が鳴った。
晴くんに鼻を摘ままれる。
そう言って晴くんが部屋を出ていく。
閉まった扉を見て、
私は気が気じゃなかった。
***
そして、数時間後……。
真っ黒に焦げたお粥……らしきもの。
鍋を見下ろし、絶句していたら、
晴くんから無言の圧を感じた。
心を決めて、私はスプーンに口をつける。
ごくりとそれを飲み込めば……。
口内に広がる『辛い』『痛い』『苦い』
『酸っぱい』などなどの刺激。
私は息を止めて、
晴くんのお粥を食べる。
それを見て顔をほころばせた晴くんに、
不思議と心が温かくなるのを感じた。
【晴side】
あなたが薬を飲んで眠ったあと、
俺はキッチンにいた。
自分でも呆れるくらい浮かれてる。
シンクにあいつの皿を下げ、
俺は鍋に残ったお粥をひと口食べてみた。
思わず吹き出し、
俺は急いで口をゆすぐ。
俺は胸を押さえる。
あいつの優しさに、
ドキドキしてる自分がいた。
顔が熱を持つのを自覚しながら、
俺はその場にしゃがみ込み、頭を抱える。
誰もいないのをいいことに、
俺は悶絶するのだった。
***
幾分か気が鎮まって、
あなたの様子を見に部屋に行くと……。
あなたが涙を流しながら、
寝言をもらしていた。
いつも平然としてるから、
そのことをすっかり忘れていた。
その涙を拭ってやると、
あなたのまつ毛が
ふるふると震えだす。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。