あれから何を盗ってきたか、見せ合いっこをした。
するとさとみはなんと誰かのお金まで取っていて、本当にすごいなぁと思った。
でも私も頑張ったんだ。
もう夏になってきて、額からこぼれ落ちるような汗がとめどなく出てくる。
そんな中重要なのは水分。
そう、飲み物を大量に取ってきたからだ。
貴方と一緒だから、いつまでも笑っていられる気がした。
その日、さとみと私は公園で寝泊まりすることにした。
そして、夢を見たんだ。
いつかに夢見てた。
優しくて、誰にも好かれる主人公なら……
こんなふうに汚くなってしまった私をちゃんと見捨てずにいてくれたのかな…?
いつの間にか口に出ていたのか、さとみが隣のベンチからこちらに来て話した。
反対側には、宛もなく彷徨うセミの群れ。
かなり前までとめどなく溢れていた涙の水さえもなくなって。
気づくと涙としての水もなくなったはず。
その涙が出そうになっていて、
また更に、後から気づいたのは怒り狂うような警察たちの鬼のような怒号。
警察の人は大きな声で何をしていると聞いてきたがそんなのは気にしない。
そうして走り出した。追いつかれるのはわかっている。
それでも私と君ははしゃぎあった。
でももう、そろそろ終わりでもいいかもしれない。
ここまで来れたんだ。満足しないわけが無いよ。
ふと、私はさとみが持ってきていた果物ナイフへと手を伸ばした。
…ねぇ、さとみ。
そうだよ、もう満足なの。だからさ
私はきっと、今まででいちばん幸せな時間を過ごせたと思う。
だからこうやって最後も…いや、最期も。
最後まで君といられたから、私は幸せに終えられるんだ。
さとみ、ありがと。
首をかき切って数秒もあるかないか。
セミの群れの鳴き声が響き渡る夏のどこか、まるで映画の中のワンシーン。
彼に伝えたい事を言いかけて、私は意識を失った。
多分あれじゃあ伝わらないよなぁ……
さとみ、私は本当にあなたといられて良かった。次は2人とも愛されて生まれてこようね。そしてまた会おうよ。巻き戻される映画のワンシーンように繰り返していこう。
また、どこかで。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。